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1.会話を無断録音したテープの証拠能力が認められた事例 |
1.判旨と解説
捜査機関が違法に証拠を収集した場合、当該証拠の証拠能力が否定されることがあります。
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刑事事件における証拠の多くは、捜査機関が収集したものです。他方で、私人が証拠を収集し、これが捜査機関に提出されることもあります。本件では、私人が相手方との会話を、その正確性を担保するために、相手方の同意を得ずに録音していました。裁判において録音テープが提出されましたが、無断録音であることから、その証拠能力が争われました。
捜査機関が収集した証拠に違法収集証拠排除法則が適用されるには、その手続きに違法性があることが必要です。そうすると、私人が収集した証拠の証拠能力が否定されるには、少なくとも、収集行為が違法であることが必要だと思われます。
最高裁は、対話者の一方が会話やその場の状況を無断録音することは違法ではないとしました。もっとも、これは本件の事情を前提にした判断で、無断録音が常に適法になるわけではないと思われます。
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「所論にかんがみ職権をもつて判断するに、記録によれば、符一号及び同八号の録音テープはいずれも被告人の同意を得ないで録音されたものではあるが、前者の録音テープは、被告人が新聞紙による報道を目的として新聞記者に聞かせた前示偽電話テープの再生音と再生前に同テープに関して被告人と同記者との間で交わされた会話を、同記者において取材の結果を正確に記録しておくために録音したものであり、後者の録音テープ(被告人の家人との対話部分を除く。)は、未必的にではあるが録音されることを認容していた被告人と新聞記者との間で右の偽電話に関連して交わされた電話による会話を、同記者において同様の目的のもとに録音したものであると認められる。このように、録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであつても、違法ではないと解すべきである。したがつて、録音が違法であることを理由にそれらの録音テープの証拠能力を争う所論は、すでにこの点において前提を欠くものといわなければならない。」