強盗致死傷罪は、強盗が人を負傷又は死亡させた場合に成立します(刑240条)。
・刑法240条 「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」
・刑法243条 「第235条から第236条まで、第238条から第240条まで及び第241条第3項の罪の未遂は、罰する。」
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強盗とは、強盗犯人(事後強盗、昏睡強盗の犯人も含む)を指します。強盗が既遂か未遂かを問いません(最判昭和23年6月12日刑集2巻7号676頁)。
致死傷の結果は強盗の機会に生じる必要があると解されています(最判昭和24年5月28日刑集3巻6号873頁)。
強盗致死傷罪は未遂犯処罰規定があります(刑243条)。強盗致死傷罪が既遂となるか未遂となるかは、死傷の結果が発生したか否かで決定されます(最判昭和23年6月12日刑集2巻7号676頁)。
例① Xは、Y宅に入ってYに暴行を加え、金銭を奪おうとしたがYに抵抗された。そこで、Xは持っていたナイフでYを刺し、何も奪わず逃亡した。その結果Yは死亡した。
Xは財物を奪取していないため、強盗は未遂に終わっています。しかし、上記のように、強盗未遂犯人も本罪の「強盗」に含まれます。また、Yは死亡しており、これはXが強盗の犯行中に行った行為により生じています。そのため、Xの行為に強盗殺人既遂罪が成立します。
例② Xは、Yを殺して金銭を奪おうとY宅に強盗に入った。そしてYを殺害し金銭を奪った。
強盗に入った者が人を死亡させた場合で、死について故意があるときには殺人罪は適用されず、刑法240条のみが適用されます(最判昭和32年8月1日刑集11巻8号2065頁)。したがって、この例の場合Xには殺人罪の規定は適用されず強盗殺人罪の規定が適用されます。
この立場だと、負傷についての故意があった場合にも同様の結論になります(傷害罪は適用されず240条のみが適用される)。
・死について故意あり・・・強盗殺人罪
・死について故意無し・・・強盗致死罪
・負傷について故意あり・・・強盗傷人罪
・負傷について故意無し・・・強盗致傷罪