人権は人間であるならば誰でも保障される権利です。もっとも、かつては国と一定の関係に立つものには、人権が及ばない、ないし制限される場合があるとされました。これを特別権力関係の理論と言います。
特別権力関係の理論が成立する場合としては、公務員、受刑者、伝染病等の患者が挙げられてきました。特別権力関係では以下の原則が妥当するとされました。
①包括的支配権…例えば、懲戒権や命令権を法律の根拠無しに行使できる
②人権の制限…表現の自由等各種の自由権を法律の根拠なしに制限できる
③司法審査の排除…特別権力関係における紛争に裁判所の司法審査が及ばないのが原則
しかし、現在の日本国憲法においては特別権力関係の理論はそのままでは妥当しないとされます。もっとも、かつて特別権力関係の理論が妥当した公務員、受刑者の人権については法律上、一定の制限が存在します。また、特別権力関係の理論と類似する部分社会の法理という概念が判例上で認められています。