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【判例解説】自首の成否③(刑法総論):最判令和2年12月7日

Last Updated on 2022年5月25日

 

 

Point 
1.虚偽の事実を申告したことで自首の成立が否定された事例 

 

 

(関連条文) 

・刑法42条1項 「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」 

 

【争点】 

・自己の犯した犯罪事実とは、態様の異なる犯罪事実を申告した場合であっても、自首が成立するか 

 

1.判旨と解説 

 

*自首の解説はこちら 

 

 自首は、捜査機関に犯罪事実及び犯人が発覚する前にしなければなりません。この要件を充足していれば自首が成立するのが原則ですが、自首の際に虚偽の申告をした場合には、自首の成否はどうなるのでしょうか? 

 

 過去の最高裁の判例では、虚偽の事実を申告した場合でも自首が成立するとしたものがあります(最判昭和60年2月8日最判平成13年2月9日)。 

 

 本件で被告人は、自己が殺人罪を犯したのに、嘱託殺人罪を犯したとして自首をしています。殺人罪と嘱託殺人罪は、被害者の嘱託があるか否かの違いがあるだけで、その他の構成要件は同一のものです。しかし、最高裁は自首の成立を否定しました。Xを被害者とする嘱託殺人罪について申告した場合、Xに対する殺人罪について申告したことにはならないという事です(この判例の射程が他の犯罪類型についても及ぶ場合、例えば窃盗罪を犯したと虚偽の申告をしたときは、実際に犯した詐欺罪や横領罪について申告したことにはならない、つまり自首が成立しないことになります)。 

 

 「被告人は,自宅で,被害者をその嘱託を受けることなく殺害した後,この事実が捜査機関に発覚する前に,嘱託を受けて被害者を殺害した旨の虚偽の事実を記載したメモを遺体のそばに置いた状態で,自宅の外から警察署に電話をかけ,自宅に遺体があり,そのそばにあるメモを見れば経緯が分かる旨伝えるとともに,自宅の住所を告げ,その後,警察署において,司法警察員に対し,嘱託を受けて被害者を殺害した旨の虚偽の供述をしたことが認められる。以上の事実関係によれば,被告人は,嘱託を受けた事実がないのに,嘱託を受けて被害者を殺害したと事実を偽って申告しており,自己の犯罪事実を申告したものということはできないから,刑法42条1項の自首は成立しないというべきである。これと同旨の第1審判決を是認した原判決は,正当である。」 

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