爆発物取締罰則(通称、爆取)は、明治17年(1884年)に出された勅旨で、現在も法的効力を有します。
同法は、治安を妨げる又は人の身体・財産を害する目的で爆発物を使用することなどを禁止しています(1条)。法定刑は死刑まであります。
・1条 「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」
同罪は目的犯なので、治安を妨げる、あるいは、人の身体・財産を侵害する目的が、構成要件要素となります。したがって、爆発物を使用しても、これらの目的を持たない場合には、同罪が成立することはありません。
また、同法は、爆発物の使用だけでなく、製造や輸入等も禁止しています。
・5条 「第一条ニ記載シタル犯罪者ノ為メ情ヲ知テ爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入販売譲与寄蔵シ及ヒ其約束ヲ為シタル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」
爆発物とは「理化学上のいわゆる爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資料が結合せる物体であって、その爆発作用そのものによって、公共の安全を撹乱し、又は人の身体財産を傷害損壊するに足る破壊力を有するもの」をいいます(最判昭和28年11月13日刑集7巻11号2121頁)。火炎びんはこれに含まれないと解されていますが、別に、火炎びんの使用等の処罰に関する法律で規制されています。
なお、同法は、爆発物を発見した者に警察官に告知する義務を課しています(7条)。
・7条 「爆発物ヲ発見シタル者ハ直ニ警察官吏ニ告知ス可シ違フ者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス」
近年では、マッチ棒複数本、固形燃料6個、ゲル状着火剤複数個を貼り付けたカセットガスボンベ3本等を段ボールに収納するなどした事案で、有罪判決が出されています(大津地判令和3年12月17日LEX/DB25591689 )。この事案では、被害者がいなかったにもかかわらず、懲役6年の判決が下されています。