人権は、人間であるがゆえに誰にでも保障される権利です。もっとも、現行法上、公務員の人権が制限される場合があります。例えば、国家公務員法では、公務員の政治活動が制限されています。
1.公務員の人権制限の根拠
かつては、特別権力関係の理論の基、法律の根拠無しに、公務員の人権制限は一定程度許されると解されていました。もっとも、現在の日本国憲法においてはこの理がそのまま妥当せず、公務員の人権制限は何を根拠にどの程度許されるか争われてきました。
公務員の人権を制限する根拠については以下の説があるとされます。
①憲法15条2項の全体の奉仕者に求める説
これは、憲法15条2項の全体の奉仕者に人権制限の根拠を求めます。
②公務員関係という法関係とその自律性に求める説
この説は、憲法が公務員という特殊な法律関係の存在を前提としその自律性を認めており、公務員制度は行政の中立性を確保することでその自律性を確保できるので、その目的達成のために合理的かつ必要最小限の規制は許されるとします。
2.判例の立場
判例は、猿払事件で公務員の政治活動の自由の制限が許される根拠を、憲法15条2項の全体の奉仕者と、これに対する国民の信頼に求め、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまれば許されるとしました。そして、その判断においては、①目的の合理性②目的と手段の合理的関連性③利益衡量の基準を用いて判断するとしました。
なお、後の堀越事件では、国家公務員法102条1項の解釈を限定的にし、実質的に猿払事件判決を実質的に変更したのではないか注目を集めています。