【コラム】職務質問を拒否してもいいの?職務質問を受けた場合の対処法!
「夜中街を歩いていたら、警察官に職務質問をされた。警察官は全然は解放してくれず、いかんを取られた。」といったような経験をしたことはありますか?職務質問を受けた場合に拒否してもいいのか、その対応方法は何かあるか、と疑問に思う方もいるかと思います。その点について、以下で詳しく解説します。
1.職務質問とは
職務質問とは、犯罪を犯し、又は犯罪を犯そうとしている者に対して警察官が行う質問行為等を言います。職務質問は、警察官職務執行法で認められている行為です。
*職務質問の詳しい解説はこちら
2.職務質問への対応方法
職務質問はあくまでも相手方の任意でのみ許されるものです。これに応じたくないと考える者が、職務質問を無視してその場を立ち去ることは違法でも、犯罪でもありません。 そのため、職務質問を受けた場合に、「これに応じる義務はない。」と告げて、立ち去ることも理論上可能です。そして、そのような行為をしても、後で罰金を支払ったり、逮捕されたりすることはありません。
しかし、職務質問は、犯罪の予防も目的とするものなので、対象者を一定程度引き止め、質問に答えるよう説得する行為は許されると解されています。そのため、上記のように職務質問を拒絶する旨告げても、警察官が食いついてくる可能性もあります。
また、場合によっては、職務質問に際し、軽度の有形力の行使等が認められる場合もあります。当然、殴る蹴るなどの行為は許されませんが、肩を掴み動きを止める、進行方法に立ちふさがるなどの行為は適法とされる場合は多いでしょう。
一番重要な点は、職務質問をする警察官は、その者に、何らかの犯罪の嫌疑があると考えていることです。警察官も、対象を選ばず職務質問をしているわけではありません。警察官は、何らかの疑惑をもって、職務質問を行っています。そのため、職務質問を拒むと、警察官は嫌疑を深め、躍起となって職務質問を継続するでしょう。もちろん、職務質問を継続しようとするのは職務行為として当然ですので、これが直ちに違法となるわけではありません。
ちなみに、裁判例では、リュックの中身を見せるよう求めた警察官に対し、これを拒絶した結果、約1時間以上その場で立ち往生することになった事案があります(東京地判平成31年3月13日)。このように、職務質問ないし付随する所持品検査を拒絶すると、かえって時間を取られることになることがあります。 そして、職務質問を受けた者にとって一番不満な点は、時間を取られること、です(ただ気に食わないだけという人もいるかといますが、この感情への対応は不可能です。)。しかし、職務質問を受けた時点で、既に時間を取られることは、ある意味確定しています。なので、以降は、どれだけ早く開放してもらえるかが重要になってきます。
以上を踏まえると、職務質問を受けた場合にこれを拒むと、余計疑いが深まり時間を取られることとなります。そのため、職務質問を受けた場合は、これに応じて、さっさと解放してもらうのが、処世術と言えるでしょう。あるいは、一度拒絶の意思を示し、これに応じてくれれば良し、応じてくれないならば、潔く質問に答えるのが良いでしょう(その際、時間がないことなどを告げれば、多くの警察官は、手短に行ってくれるはずです)。
職務質問にあった場合の心持としては、「電車の遅延に巻き込まれた。」「信号待ちにやけにひっかかる。」などと考えておくのが良いでしょう。人の作為が挟まっているから苛立ったりするのであって、「今日はついていない日だな。」と、気持ちを切り替えるのも大事なことです。
3.国家賠償請求について
なお、警察官の職務質問が違法だとして、国家賠償請求を提起するケースもあります。ただ、多くの場合、その請求は認めれらないでしょう。
上記東京地判平成31年のケースでは、職務質問を受けた原告について、開始時点では職務質問の要件を満たしていなかったとしたものの、その後、「本件店舗に入ろうとしたことは,店内での立てこもり等に及ぶことを予感させる不審な行動ということができる上,これに加えて,本件店舗の店員に対して110番通報をして警察を呼んでほしい旨述べたことは,客観的に見れば,制服を着用した警察官らから職務質問を受けている者が,店員に対して警察を呼んでほしい旨述べたものであって,職務質問を受けたことによる混乱や動揺をうかがわせるような不可解な言動に当たるといわざるを得ない。そうすると,原告が本件店舗に入ろうとしてこれを制止され,本件店舗の店員に対して110番通報をして警察を呼んでほしい旨述べたことは,不審事由に該当するということができる。」として、最終的に国家賠償請求を棄却しています。
開始当初においては、職務質問の要件を満たしていないが、そこから立ち去ろうと店舗内に入った行為等が不審な行動に当たり、職務質問の要件を充足するというのは、いわば、職務質問の拒否を認めない論法に近いため、やや疑問があります。 とはいえ、職務質問を受けた場合の実際の対応としては、先ほど述べたように、素直に応じるのが良いでしょう。