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法定労働時間、所定労働時間、実労働時間の違いとは?分かりやすく解説!

Last Updated on 2024年1月16日

 

 労働法では、労働時間という概念があります。使用者は、労働時間に対応する金銭、すなわち賃金を労働者に支払います。

 

 ところで、労働時間には法定労働時間、所定労働時間、実労働時間と呼ばれるものがあります。これらの用語の意義と関係性はどうなっているのでしょうか?

 

1.法定労働時間とは?

 

 法定労働時間とは、労働基準法が定める、労働時間の上限を言います(労働基準法32条)。

 

・労働基準法32条1項 「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」

・同条2項 「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。」

 

 同条を見ればわかるように、法定労働時間は、1週間40時間、1日8時間となっています。

 

2.所定労働時間とは?

 

 これに対し、所定労働時間とは、労働契約や就業規則等で定められている労働時間をいいます。例えば、就業規則に、「労働時間は、7時間とする。」等と定められていた場合、所定労働時間は7時間となります。

 

3.実労働時間とは?

 

 実労働時間とは、その名の通り、労働者が実際に働いた時間を言います。例えば、「労働時間は、7時間とする。」等と定められている会社において、7時間半働いたとします。この場合、所定労働時間は7時間ですが、実労働時間は7時間半となります。

 

4.法定労働時間、所定労働時間、実労働時間の違い等

 

(1)3つの労働時間の違い

 

 法定労働時間は、原則として、当事者の合意いかんにかかわらず、1週間40時間、1日8時間で固定です。そのため、当事者の合意により所定労働時間を9時間とした場合であっても、法定労働時間は8時間となります(*)。

 

 法定労働時間は労働時間の上限なので、所定労働時間が9時間とされていても、9-8=1時間分労働させた場合は、違法となります。ここでいう労働時間は、実労働時間を指します。

 

・所定労働時間が9時間で、実労働時間が9時間の場合 法定労働時間8時間を超えるので違法

・所定労働時間が9時間で、実労働時間が8時間の場合 法定労働時間8時間を超えないので適法

・所定労働時間が7時間で、実労働時間が9時間の場合 法定労働時間8時間を超えるので違法

 

 これらのことから分かるように、法定労働時間を超えているか否かは、労働契約や就業規則の定める所定労働時間とは、直接関係がないということです。

*所定労働時間を9時間とする定め

 これは仮想の例ですが、実際、労働契約や就業規則により、所定労働時間を9時間とする定めをしていたり、導入を検討していたりする使用者もいるかと思われます。そのように定めるのは、労働者に1日9時間働いてもらいたいといったニーズによるからでしょう。

 もっとも、同規定は、実際には意味を持たないと思われます。それは以下の通りです。

➀法定労働時間は8時間であること

➁法定労働時間を超える労働は、36協定で定めた「労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合」に限り許され(労働基準法36条2項3号)、無条件で9-8=1時間について労働義務を課すことはできないこと

➂そうすると、所定労働時間を9時間とする合意は、労働基準法に達しない部分(無条件に、法定労働時間を1時間超えた労働義務を課す部分)につき、労働基準法の強行法規性あるいは労働基準法13条により、無効となる。解釈により、1時間分の労働義務を、36協定で時間外労働が許される場合に限るとした場合も、④と同じ帰結。

④その結果、所定労働時間は、8時間となる。 

(2)重要なのは法定労働時間

 

 さて、3つの労働時間の概念について説明しましたが、もっとも重要なのは、法定労働時間です。というのも、労働基準法上、法定労働時間を超えた場合に初めて、割増賃金が発生するためです。反対に、所定労働時間を超える労働をしただけでは、割増賃金は発生しません。

 

 例えば、所定労働時間が8時間、実労働時間が9時間の場合を考えてみます。この場合、実労働時間は、所定労働時間、法定労働時間共に超えており、割増賃金が発生します。

 

 他方、所定労働時間が7時間、実労働時間が8時間の場合を考えてみます。この場合、実労働時間は所定労働時間を超えていますが、法定労働時間を超えていません。割増賃金は、法定労働時間を超えた場合に発生しますので、この場合は、割増賃金が発生しないこととなります。

 

 以上より、使用者、労働者は、労働時間が法定労働時間を超えるか否かに注意を払わなければなりません。

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