Skip to main content

【判例解説】電子メールを示して行った尋問と証拠能力(証拠):最決平成25年2月26日  

 

Point 
1.電子メールを利用して尋問したことから電子メール全体に証拠能力を認め、事実認定を行った原審を違法とした事例 

  

1.事案の概要 

 

被告人は、詐欺罪などで起訴されました。 

 

第1審第10回公判期日において被告人質問が行われました。検察官は被告人が送信した平成17年10月30日付の電子メール(本件電子メール)を被告人に示して質問しました。本件電子メールは第1審第10回公判調書中の被告人の被告人供述調書の末尾に添付されましたがこれとは別に証拠として取り調べられてはいません 

 

 第1審は本件電子メールの存在及び記載内容を被告人の詐欺の故意や共犯者との間の共謀の認定に利用しました 

 

原判決は第1審が本件電子メールを事実認定の用に供したことについて本件電子メールは証拠物と同視できる客観的証拠であることそれを示された被告人がその同一性や真正な成立を確認していること本件電子メールを被告人に示すに当たり刑訴規則199条の10第2項の要請が満たされていたことを根拠として本件電子メールは被告人の供述と一体になったとみることができるため、事実認定に違法はないとしました 

 

(関連条文) 

・刑事訴訟法320条1項 「第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。」 

・刑事訴訟規則49条 「調書には、書面、写真その他裁判所又は裁判官が適当と認めるものを引用し、訴訟記録に添附して、これを調書の一部とすることができる。  

・規則199条の10第1項 「訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。  

・規則199条の11第1項 「訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。 

・2項 「前項の規定による尋問については、書面の内容が証人の供述に不当な影響を及ぼすことのないように注意しなければならない。 

 

【争点】  

・本件電子メールを事実認定の用に供したのは適法か  

 

2.判旨と解説 

 

 第1審において検察官は、本件電子メールを被告人に示して尋問をしています。この措置は、規則199条の10第1項、199条の11第1項に基づく措置として適法なものです。また、本件電子メールを公判調書に添付するのも、規則49条に基づく措置として適法なものです。 

 

 とはいっても、上記の措置により、本件電子メールが独立した証拠となるわけではありません。そのため、本件電子メールを証拠として事実認定の基礎とするには、別に証拠調請求をし、証拠として採用する必要があります。 

 

本件電子メールは,刑訴規則199条の10第1項及び199条の11第1項に基づいて被告人Xに示され,その後,同規則49条に基づいて公判調書中の被告人供述調書に添付されたものと解されるが,このような公判調書への書面の添付は,証拠の取調べとして行われるものではなく,これと同視することはできない。したがって,公判調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない書面は,それが証拠能力を有するか否か,それを証人又は被告人に対して示して尋問又は質問をした手続が適法か否か,示された書面につき証人又は被告人がその同一性や真正な成立を確認したか否か,添付につき当事者から異議があったか否かにかかわらず,添付されたことをもって独立の証拠となり,あるいは当然に証言又は供述の一部となるものではないと解するのが相当である。 

 

 規則に基づき、本件電子メールのような図面を示して尋問を行った場合、その図面は、証人が引用した限度において、証言の一部となります。そのため、当該部分について、裁判所が事実認定の基礎とすることは許されると考えられています。 

 

 例えば、内容を「123456789」とするメールが送られたとしてこれが規則199条の10などにより証人に示され、証人がこれを引用して「12345」と発言したとします。この場合、1~5の部分については、証言の内容となっています。そのため、その部分を証拠とすることができます。 

 

しかし、この場合でも、引用されたメールそのものが証拠となるわけではありません。あくまでも、証拠となるのは証人の証言であって、引用されたメールではないのです。そのため、証言の内容となっていない6~9の部分については、事実認定の基礎とすることはできません。 

 

 第1審、原審は、引用された本件電子メール全体を事実認定の用に供していますが、最高裁はこれを違法としました。 

 

*下記で引用されている判例の解説はこちら 

 

本件電子メールについては,原判決が指摘するとおり,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであること,被告人坂上に対してこれを示して質問をした手続に違法はないこと,被告人Xが本件電子メールの同一性や真正な成立を確認したことは認められるが,これらのことから証拠として取り調べられていない本件電子メールが独立の証拠となり,あるいは被告人Xの供述の一部となるものではないというべきである。本件電子メールは,被告人Xの供述に引用された限度においてその内容が供述の一部となるにとどまる(最高裁平成21年(あ)第1125号同23年9月14日第一小法廷決定・刑集65巻6号949頁参照)。したがって,上記の理由により本件電子メールが被告人Xの供述と一体となったとして,これを証拠として取り調べることなく事実認定の用に供することができるとした原判決には違法があるといわざるを得ない。 

 

スポンサーリンク
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。