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【判例解説】職務に関する行為②(刑法各論):最決平成18年1月23日 

Last Updated on 2022年8月17日

 

Point 
1.教育指導する医師を関連病院に派遣することが、職務に密接な関係のある行為にあたるとされた事案 

 

1.事案の概要 

 

公務員であるAは、奈良県立医科大学の教授で、かつ、同大学附属病院救急科部長でした。Aは、救急科等に属する助教授以下の教員や医員臨床研修医等の医師を教育し,その研究を指導する職務権限を有していました。また、自己が長を務める医局を主宰運営する役割を担い当該医局の構成員を教育指導しその人事についての権限も有していました加えて、医局と一定の関係を有する外部の病院への医師派遣についても最終的な決定権を有しておりAにとって自己が教育指導する医師を関連病院に派遣することはその教育指導の上でもまた,将来の救急医学教室の教員等を養成する上でも重要な意義を有していました。 

 

 本件で被告人は、その経営に係る関連病院に対する医師の派遣について便宜ある取り計らいを受けたことなどの謝礼等の趣旨で、Aに対して金銭を供与したため、贈賄罪で起訴されました。 

 

(関連条文) 

・刑法197条1項・・・公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。 

・刑法198条・・・第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。 

 

【争点】  

・被告人に対する賄賂の供与は、職務に関するものといえるか 

 

2.判旨と解説 

 

 贈賄罪が成立するためには職務に関して賄賂が供与等されたことが必要です。本件ではAにとってその教育指導する医師を関連病院に派遣することが職務に関する行為と言えるかが問題になりました。 

 

*賄賂罪の解説はこちら 

 

 職務とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務をいいます。そして、公務員が法令上管掌するその職務のみならず、その職務に密接な関係を有するいわば準職務行為又は事実上所管する職務行為(職務密接関連行為)も職務に含まれると考えられています 

 

 本件で最高裁は、Aは救急科等に属する医師等を教育指導する権限を有しており、その医師等を関連病院に派遣することは、職務に密接に関連する行為と評価できるとして、被告人に贈賄罪が成立するとしました。 

 

以上の事実関係の下で,Aがその教育指導する医師を関連病院に派遣することは,奈良医大の救急医学教室教授兼附属病院救急科部長として,これらの医師を教育指導するというその職務に密接な関係のある行為というべきである。そうすると,医療法人理事長として病院を経営していた被告人が,その経営に係る関連病院に対する医師の派遣について便宜ある取り計らいを受けたことなどの謝礼等の趣旨の下に,Aに対して金員を供与した本件行為が贈賄罪に当たるとした原判断は正当である。 

 

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