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[解説] 防衛の意思(刑法総論):最高裁昭和50年11月28日第三小法廷判決 

 

Point 
1.攻撃の意思があっただけでは、防衛の意思は否定されない 

 

1.事案の概要 

 

 被告人は、友人のAとともに、乗用車で走行中、たまたま花火に興じていたBらのうちの一名を友人と人違いして声を掛けたことから、右Bら「人違いをしてすみませんすむと思うか。」「海に放り込んでやろうか。」などと因縁をつけられました。そのあげく酒肴を強要されて近くの飲食店でBらに酒肴を馳走し、その乗用車でBらを送り届けました。ところが、下車すると、Bらは、一斉にAに飛びかかり、無抵抗の同人に対し、顔面、腹部等を殴る蹴るの暴行を執拗に加えまし。そこで、被告人は、このまま放置しておけば、Aの生命が危いと思い、同人を助け出そうとして、自宅に駆け戻り、散弾銃に実包四発を装てんし、安全装置をはずしたうえ、再び現場に駆け戻りまし。しかし、AもBらも見当たらなかったため同所付近を探索中、同所から約三〇メートル離れた路上において、Bの妻を認めたので、Aの所在を聞き出そうとして同女の腕を引っ張ったところ、駆けつけたBが「このやろう。殺してやる。」などといって被告人を追いかけてきました。そこで、被告人は、「近寄るな。」などと叫びながら逃げましたが、Bに追いつかれそうに感じ、Bが死亡するかも知れないことを認識しながら右散弾銃をBに向けて一発発砲し、加療約四か月を要する腹部銃創及び左股部盲管銃創の傷害を負わせまし。被告人は、殺人未遂の被疑事実で起訴されました。   

 

(関連条文) 

・刑法36条1項 「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 

・同条2項 「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 

 

【争点】 

・防衛行為者に攻撃の意思がある場合、防衛の意思が否定されるか 

 

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2.判旨と解説 

 

 本件では、防衛の意思が認められるかが問題となりました。正当防衛の要件として防衛の意思が必要かについては争いがありますが、判例は防衛の意思必要説に立っています。防衛の意思必要説に立った場合、防衛行為者に防衛の意思が欠けると、正当防衛はおろか、過剰防衛すら成立しません、 

 

*正当防衛の解説はこちら 

*過剰防衛の解説はこちら 

 

 本件で被告人はBに対して攻撃の意思生じていたとされています。そこで、攻撃の意思がある場合に防衛の意思が欠けるかが問題となります。 

 

 攻撃の意思と防衛の意思は排他的な関係にないので両意思が併存した状態で相手に反撃行為をすることは十分ありえます。また、実際急迫不正の侵害に直面した場合、これに憤激し、多少の攻撃の意思が生じることは当然ともいえます。その場合に防衛の意思に欠けるとすると、ほとんどの事例で防衛の意思が否定されてしまいます。 

 

 最高裁は、防衛に名を借りて侵害行為者に対し積極的に攻撃を加える行為の場合は防衛の意思が否定されるが、防衛の意思と攻撃の意思が併存している場合の行為は、防衛の意思に欠けることはないと判示しました。 

 

↓以下原文

「・・・急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り、その行為は、同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであつても、正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが、相当である。すなわち、防衛に名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は、防衛の意思を欠く結果、正当防衛のための行為と認めることはできないが、防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は、防衛の意思を欠くものではないので、これを正当防衛のための行為と評価することができるからである、しかるに、原判決は、他人の生命を救うために被告人が銃を持ち出すなどの行為に出たものと認定しながら、侵害者に対する攻撃の意思があつたことを理由として、これを正当防衛のための行為にあたらないと判断し、ひいては被告人の本件行為を正当防衛のためのものにあたらないと評価して、過剰防衛行為にあたるとした第一審判決を破棄したものであつて、刑法三六条の解釈を誤ったものというべきである。 

 

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