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[解説] 所持品検査の適法性-米子銀行強盗事件②(捜査):最高裁昭和53年6月20日第3小法廷判決

Last Updated on 2020年10月16日

Point 
1. 所持品検査は職務質問に付随する行為として許される場合がある 

①はこちら

 

もっとも、所持品について捜索を受けない権利は憲法上保障されていますし、また、捜索に至らない程度の行為であっても所持者の権利を制限するものです。 

そのため、捜索に至らない程度で、強制にわたらない所持品検査でも、無制限に許されると解するのは適切ではありません。 

そこで最高裁は、所持品検査は具体的状況のもとで相当と認められる限度でのみ許されるとします。 

 

「・・・所持品検査には種々の態様のものがあるので、その許容限度を一般的に定めることは困難であるが、所持品について捜索及び押収を受けることのない権利は憲法三五条の保障するところであり、捜索に至らない程度の行為であつてもこれを受ける者の権利を害するものであるから、状況のいかんを問わず常にかかる行為が許容されるものと解すべきでないことはもちろんであつて、かかる行為は、限定的な場合において、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるものと解すべきである。」 

 

そして、以下の事情を指摘し、本件所持品検査は適法であるとしました。 

①周辺で銀行強盗という重大事件が発生していた 

②被告人らにその容疑や、凶器所持の疑いがあった 

③警察官らの職務質問や所持品検査の要求を拒否する等不審な挙動を取り続けていた 

④以上の点から、被告人らの容疑を確かめる緊急の必要性があった 

⑤警察官らの行為は施錠されていないバッグのチャックを開けて内部を見たに過ぎないため、法益の侵害は大きくない

*なお、その後、バックのこじ開け行為がなされていますが、バッグ内部に大量の紙幣を発見した時点で緊急逮捕(刑訴210条)の要件が備わり、緊急逮捕が行われたため、逮捕に伴う捜索・差押え(刑訴220条1項)として適法と判断されています。 

 

「これを本件についてみると、所論のB巡査長の行為は、猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において、深夜に検問の現場を通りかかつたA及び被告人の両名が、右犯人としての濃厚な容疑が存在し、かつ、兇器を所持している疑いもあつたのに、警察官の職務質問に対し黙秘したうえ再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、右両名の容疑を確める緊急の必要上されたものであつて、所持品検査の緊急性、必要性が強かつた反面、所持品検査の態様は携行中の所持品であるバッグの施錠されていないチヤツクを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、これによる法益の侵害はさほど大きいものではなく、上述の経過に照らせば相当と認めうる行為であるから、これを警職法二条一項の職務質問に附随する行為として許容されるとした原判決の判断は正当である。」 

 

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