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[解説] 京都府学連事件(肖像権):最高裁昭和44年12月24日大法廷判決

Last Updated on 2022年3月15日

Point 
1.憲法13条は、国民の私生活上の自由を保障しており、その一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有する
 2.憲法13条から、新しい人権が保障されることを明らかにした 

1.事案の概要 

被告人Xは、デモ行進に参加しました。このデモ行進については、都道府県公安委員会からの条件付きの許可を受けておりました。ところで、デモ行進の際に、当地域の警察であったA巡査は、付された条件に違反しないか等を監視していました。すると、許可条件に違反する行為があったとして、A巡査がデモ隊の行進状況を写真で撮影しました。そこでXはAに詰め寄り、Aに怪我を負わせました。そのため、Xは公務執行罪、傷害罪などで起訴されました。 

2.判旨と解説 

※以下は判旨と解説になりますが、まず黒枠内で判決についてまとめたものを記載し、後の「」でその部分の判決文を原文のまま記載しています。解説だけで十分理解できますが、法律の勉強のためには原文のまま理解することも大切ですので、一度原文にも目を通してみることをお勧めします。

 

最高裁は、憲法13条が国民の私生活上の自由を保障しており、その一環として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有するとします(これを肖像権と定義しているわけではないことに注意)。また、憲法13条を根拠として、新たな人権を保障するのが可能なことを明らかにしました。 

 

「…ところで、憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」

 

しかし、その自由も公共の福祉(犯罪捜査の必要性等)のため、相当の制限を受けるとします。

 

「…個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法二条一項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。」

 

そして、法律の規定や令状、本人の同意無くして、被疑者の写真撮影が許容されるのは①現に犯罪が行われもしくは行われたのち間もなく②証拠保全の必要性・緊急性があり③撮影が相当な方法で行われた場合であるとします。また、この場合は、たとえ被疑者以外の人・ものを含んでも憲法13条、憲法35条に反しないとしました。 

 

「そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法二一八条二項のような場合のほか、次のような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときである。このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになつても、憲法一三条、三五条に違反しないものと解すべきである。」 

*あてはめについては刑事訴訟法の箇所で解説します。 

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