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1.被告人には、覚せい剤を含む違法な薬物類を輸入・所持している認識があるから、故意が認められる。 |
1.事案の概要
被告人は、知人から化粧品だといわれ、ある物を日本に運ぶよう依頼されました。これは覚せい剤でした。なお、被告人はこれが覚醒剤かは不明なものの、違法な薬物類であるとの認識はありました。
(関連条文)
・刑法38条1項 「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
【争点】
・被告人に故意が認められるか
2.判旨と解説
本件で被告人には、持ち運んだ物が覚醒剤であることの確定的な認識はありません。そこで、被告人に覚せい剤取締法違反(輸入・所持)の故意があるかが問題となります。
*故意の解説はこちら
最高裁は、被告人にはこれが覚せい剤かもしれない、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識があるので、故意が認められるとしました。
「原判決の認定によれば、被告人は、本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはないから、これと同旨と解される原判決の判断は、正当である。」