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保釈とは(刑訴88条等)?わかりやすく解説!

Last Updated on 2020年10月30日

 

 テレビやネットで「~容疑者が保釈されましたという内容のニュースを見たことがあると思います。保釈は、被告人を身体拘束から解放する制度なのですが、この内容についてはあまり説明されていないと思われます。そこで、では保釈について解説します。 

 

1.保釈とは 

 

保釈とは、保証金を支払うことで勾留から解放される制度を指します。保釈が認められると、被告人は身体拘束から解放されます。 

 

刑事訴訟法の身体拘束には逮捕勾留がありますが、逮捕中の保釈は認められていません。また、勾留には起訴前勾留と起訴後勾留がありますが、保釈が認められるのは起訴後勾留のみです(刑訴208条1項)つまり、保釈が許されるのは起訴され刑事裁判となることが予定されている被告人のみとなります。 

 

逮捕についての説明はこちら 

*勾留についての説明はこちら 

なお、平成30年度の保釈率は33.7パーセントで、これは年々増加しています。https://www.hosyaku.gr.jp/bail/data/ 

  

保釈を請求できるのは被告人やその弁護人等です。 

 

刑事訴訟法88条勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。 

 

 保釈の可否を判断するのは裁判所あるいは裁判官です。保釈の可否を判断するに際しては、検察官に意見を聞かなければなりません。  

 

・刑事訴訟法92条1項 「裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。 

 

 保釈が認められた場合、被告人は、保証金を保釈に先立ち支払わなければなりません。裁判所は、保証金被告人以外の者が支払うことを許すことができます。保証金の額は犯罪の性質や被告人の資産等を考慮して決します。重大な犯罪を犯した場合や、被告人がお金持ちである場合(話題なった日産のカルロス・ゴーン)には特に高額の保証金の支払いが求められます。 

 

何故被告人により保証金の額が異なるかと言うと、保証金は保釈された被告人を裁判に出頭させたり、被告人が証拠を隠滅したりするのを防ぐための担保となるからです。以下で記載した条文を見れば分かるように、保釈が取り消された場合には、保証金が没される場合があります。しかし、不適当な行為をしたらこれを没取すると宣言してもこれがダメージとならない金額であれば、被告人としては痛くもかゆくもありません。この場合、被告人は保証金を捨てて逃亡等する恐れがありそれでは適正な刑事司法を実現できなくなってしまいますそのため、保釈金の額は被告人毎の事情を考慮して決することとされているのです。 

 

保釈に際しては、保証金の納付の他に、被告人に必要な制限をすることができます。この条件に反した場合にも、保釈が取り消されることがあります。保釈が取り消された場合、被告人は再び刑事施設に収容されます。 

 

・刑事訴訟法93条1項 「保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。」 

・同条2項 「保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。 

・同条3項 「保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。 

 

・刑事訴訟法94条1項 「保釈を許す決定は、保証金の納付があった後でなければ、これを執行することができない。」 

・同条2項 「裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。」 

 

・刑事訴訟法95条1項 「裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。」 

 

1号 「被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。 

 

2号 「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 

 

3号 「被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 

 

4号 「被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。 

 

5号 「被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。 

 

・同条2項 「保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。 

 

・刑事訴訟法98条1項 「保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があったとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。 

 


2.保釈の種類 

 

保釈が認められる場合として、刑事訴訟法上3つの場合が定められています。 

 

 まずは、必要的保釈(刑訴89条)です。これは、同条各号に定められた場合に該当しない被告人については、保釈の請求があった場合にはこれを許さなければならないとするものです。 

 

被告人が殺人罪、強盗罪、窃盗罪等を犯した場合、以前にこれらの罪を犯した場合、常習の罪(常習窃盗、常習傷害)を犯した場合、罪証隠滅・逃亡の恐れがある場合等が法で定められています 

 

・刑事訴訟法89条 「保釈の請求があったときは次の場合を除いては、これを許さなければならない。 

 

1号 「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。 

 

2号 「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。 

 

3号 「被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。 

 

4号 「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 

 

5号 「被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。 

 

6号 「被告人の氏名又は住居が分からないとき。 

 

もっとも、89条各号のいずれかに該当しても、被告人に保釈が許される場合が2つあります。1つが裁量・職権保釈(刑訴90条)です。これは裁判所が、被告人の様々な状況を考慮して、保釈を認めるのが妥当と評価する場合に保釈を認めることができるとする制度です。 

 

 もう一つが義務的保釈(刑訴91条)です。これは、不当に身体拘束が長くなった被告人を解放するための制度です。 

 

 このように、89条各号に該当するとしても、保釈が認められる場合があるのです。もっとも、先述のように、保釈率はそれほど高くはないのが現在の刑事司法の実情です。 

 

・刑事訴訟法90条 「裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。 

 

・刑事訴訟法91条1項 「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。 

 

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