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[解説] 堀越事件②(公務員の政治活動の自由の制限):最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決

Last Updated on 2020年3月10日

堀越事件①はこちら 

Point 
1.国家公務員法102条1の「政治的行為」を限定解釈し、構成要件該当性を否定(猿払事件の判例を実質的に変更) 
そして、以下では当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である、として考慮要素を示しています。

「…当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。具体的には,当該公務員につき,指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無,職務の内容や権限における裁量の有無,当該行為につき,勤務時間の内外,国ないし職場の施設の利用の有無,公務員の地位の利用の有無,公務員により組織される団体の活動としての性格の有無,公務員による行為と直接認識され得る態様の有無,行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される。」  

 

そして、以下の点を検討して、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件(当該行為が犯罪にあたるかの枠)に該当しない 、としました。

①被告人の地位が管理職的地位でなかった 

②職務内容が裁量の余地のない機械的なものであった 

③本件配布行為は勤務時間内の休日に行われた 

④本件配布行為は国ないし職場以外の施設で行われた 

⑤被告人は、公務員としてでも、公務員により組織された団体でもない 

⑥配布行為は郵便受けに文書を配布するという行為で、公務員による行為と認識されるものでない

 

「…前記のとおり,被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官で あり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。これらの事情に よれば,本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。」

 

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